裏町を出た健太郎と結衣は、予定通り買い物をする為に表通りの店に入った。あらかじめ決めていた店だ。 人の行き来の多い大通りに面している店であるのだが、他に客の姿はない。店の方で気を使って人払いをしたのか、そもそも普段からこのようなのか分からな…
ブラオリーリエにこもるリリエンベルク公国軍との交渉は決裂に終わった。交渉の使者とされたフレイには初めから分かっていたことだ。リリエンベルク公国の中心都市シュバルツリーリエに残った人たちは皆、死を覚悟していた。それをブラオリーリエにいる人々…
ここ最近ずっと健太郎のイライラは止まらない。自慢気に異世界の知識をひけらかしてみても、そのほとんどを金が掛かるという理由で否定されてしまう。大将軍という地位に就き、軍の頂点に立ったと聞かされているのに、結局は自分の思ったようには物事が進ま…
キルシュバオム公国での戦いはローゼンガルテン王国軍の優勢で進んでいる。ただあくまでも現時点で考えた場合の優勢だ。魔人軍の侵攻を許し、いくつかの拠点を奪われているという事実は変わらない。 魔人軍はラヴェンデル公国軍での戦いとは異なり、拠点確保…
――グレンたちが王都を発って数日後。 ウェヌス国軍の兵舎の会議室では、いくつもの会議が行われていた。今は三一○一○中隊が会議中だ。会議といってもその内容は第三軍の実質的な解散の通達だった。 「第三軍は丸々、勇者の直轄軍になることに決まった。所属…
街道を力ない足取りで南下する人々の列。その最後尾には、前を歩く人々とは異なり、きちんと隊列を整えて歩く軍人たちの姿がある。リリエンベルク公国の中心都市シュバルツリーリエから逃れてきた人々だ。 今のところ魔人軍の襲来はない。だからといって、そ…