月の文庫ブログ

月野文人です。異世界物のファンタジー小説を書いています。このブログは自分がこれまで書き散らかしたまま眠らせていた作品、まったく一から始める作品など、とにかくあまり考えずに気の向くままに投稿するブログです。気に入った作品を見つけてもらえると嬉しいです。 掲載小説の一覧(第一話)はリンクの「掲載小説一覧」をクリックして下さい。よろしくお願いします。 

勇者の影で生まれた英雄 #55 ちぎれた鎖

翌日、何の先触れもないままにゼクソン国王は採掘場にやってきた。 それなりに豪奢な馬車を囲む騎馬がわずかに十騎。一国の王としては身軽な移動だろう。それを確認しながらも、グレンはいつまでも視線をそれに向けることなく、自分の仕事に取り掛かった。 …

異伝ブルーメンリッター戦記 第69話 今もまだ世界は定められたストーリーで動いている

花の騎士団の行軍はかなりその様相を変えている。隊列を整えて進むのではなく。バラバラに走っているのだ。移動中も兵士を鍛えようというクラーラの提案を、エカードはこういう形で実現していた。 これにより行軍速度は大いに速まった、とはならない。永遠に…

勇者の影で生まれた英雄 #54 虜囚の身

一本の木も生えていない赤茶けた岩肌を晒している荒涼とした山の麓。 そこでは多くの人間がボロ衣を纏って忙しく働いていた。山壁に大きく開けられた洞窟。そこから次々と運び出された岩は何か所かに積まれていき、それをまた大金槌を持った者たちが細かく砕…

異伝ブルーメンリッター戦記 第68話 主人公の能力の活かし方

エカードが率いる六千の軍勢、花の騎士団=ブルーメンリッターは最短経路を選んでキルシュバオム公国に向かっている。ローゼンガルテン王国の西端近くから魔人軍が現れたというキルシュバオム公国、ローゼンガルテン王国領としても南西部にまっすぐ進む道を…

勇者の影で生まれた英雄 #53 上に立つ者の重み

城内の食事室。今日も健太郎たちは打ち合わせを行っていた。 今日は、いつもよりも健太郎は飛ばしていた。少しでも早く自分の軍を、こんな思いがあらぬ方向に進んでいるのだ。 「駐屯地の名前はトキオが良いと思う」 「はっ?」 「僕の軍の駐屯地だから僕の…

異伝ブルーメンリッター戦記 第67話 なるようになるは諦めではない

空に伸びる木々はその高さを増し、密度もこれまでとは明らかに違っている。人が踏み入った気配のまったくない森の奥。そこを一人、ジグルスは歩いている。 心に浮かぶのはわずかな後悔。もっと偵察を重ねてからのほうが良かったかという思いだ。だがその考え…