アーノルド王太子に対する周囲の評価は高い。 成績は常に一番。魔法については、飛び抜けた力はないが、それでも優秀な部類であり、何よりもそれを補って余りある剣の才能を有している。剣と魔法を融合した魔法剣『炎剣』の使い手としては、この年齢ですでに…
手元にある資料にヒューガは何度も目を通す。それほど難しい内容が書かれているわけではない。数分で読み終えられるものだ。それでもヒューガは、その資料を何度も見返さざるを得なかった。 そうしている間に、皆が会議室に集まってくる。エアル、カルポ、ハ…
運命というべきか、設定というべきか。とにかく、この世界に働く理不尽な力にリオンは怒りを覚えている。 とにかくマリアにエアリエルを近づけないことだ。そう考えて、リオンなりに様々な努力をしているつもりなのだが、それは悉く無になっている。 事ある…
エアルたちが大森林に帰ってきた。まっすぐに拠点に戻ってくるものだとヒューガは思っていたのだが、彼女たちは大森林の外縁部に留まったまま。逆にヒューガに来て欲しいと伝えてきた。 何か問題が起きたと考えて、急いでやってきたヒューガ。エアルたちから…
まだ辺りは暗く、天には星が瞬いている。静まり返った校舎の裏庭。森と見間違うほどに豊かに生い茂る木々の間を、リオンの振る剣の風切音が響いていた。 ここがリオンの毎日の鍛錬の場所だ。 朝の鍛錬は、もっぱら体力づくりと素振りなどの基礎が主なものと…
ドュンケルハイト大森林の外縁も外縁。出口にあたる場所にヒューガたちは立っている。今日はいよいよエアルたちが出立する日なのだ。 旅支度を整えたエアル、ハンゾウたち十一人は彼等が大森林に入るときに使った隠し通路から外に出て行くことになっている。…