エルフの都での騒動から一ヶ月は過ぎているが、特に何事もなく毎日が過ぎている。 カルポは結局ここに残ることになった。しかも僕を正式な主として仕えるとまで言ってきて。 ゲノムスと相談して決めたと言われたので、この場所に残ることについては文句はな…
正式な勅命を受けて、グレンは国軍を退役し、勇者付の騎士となった。 新しい職場は、騎士団官舎に一室を設けられている。厚遇といっても良いが執務室を与えられたからといって、そこでは何もすることはない。勇者の鍛錬に付き合って、騎士団の調練場に居るこ…
学院の強化合宿は、合宿所までの往復の行程を除いて、わずか一日で終了した。リーゼロッテのグループを襲った魔物襲撃事件の影響だ。 合宿地は一般の人が登山を楽しむ行楽地でもある。そんな場所に魔物の集団が出現したのだ。事は学院内で処理出来るような問…
グレンは三一○一○中隊の小隊長を集めて、定例のミーティングを開いていた。退役を望んでいるからといって仕事に手を抜くことはない。それどころか、今の内に出来ることは全て終わらせておこうと、以前よりも仕事に注力していた。 「体力向上訓練の方はどうで…
拠点の扉が開いた。そんなものがどこにあるのかと思っていたら、寝泊りしている一番大きな建物に地下に通じる隠し階段があった。ルナは良くこんなの知ってたな。 早速、それを使ってエルフの都に行ってみることにした。行くのは僕とルナ。カルポは……先生から…
今日もいつも通り、早朝から起きて裏庭で鍛錬を行っているグレン。いつもと異なるのはその動き。激しい動きは抑えて、ゆっくりと一つ一つの動きを確かめるようにして、それを行っていた。 「何だか自分の体じゃないみたいだ」 自分の体の違和感にかなり戸惑…
合宿所で一晩を過ごした後は、いよいよ本格的な調練が始まる。 初日は山頂に向かっての登山。いくつかの集団に分かれて、それぞれが決められたルートで山頂のゴールを目指すのだ。登山と言ってもそれなりに整備された道を進むことになるので、体力のある生徒…
「僕と勝負しろ!」 「……はあっ!?」 突然、勇者に勝負を申し込まれたグレンは、惚けた声を出した後、その場に固まってしまった。 グレンもこの展開は予想していなかった。出来るわけがない。勇者の存在など眼中になかったのだ。 「僕と勝負しろ。僕に勝っ…
一、二年生が一緒に参加する学院行事である強化合宿。それが行われる山中の合宿所はジグルスが思っていたのとは違って、実に快適な場所だった。 立ち並ぶ宿泊施設は王都の下手な住居より遙かに立派な建物。建物の中も綺麗に整えられている。詰め込まれて寝る…
王国騎士団の調練場は、官舎のすぐ横にある。国軍のそれよりも遥かに広大な敷地だ。騎士団が国軍より格上だからという理由もあるが、それだけでもない。王国騎士団が保有する騎馬部隊の調練をするには、広い敷地が必要だという事だ。 この広大な調練場は、今…
ヒューガくんの鍛錬を始めて一週間。鍛錬の内容は変えていません。土台をしっかり作らないと本当の意味での強さなど手に入りませんからね。 ヒューガくんは文句を言いながらも、地味な鍛錬を黙々とこなしている。本質的に努力というものが好きなのかもしれま…
宿屋にローズが戻ってみると、食堂にグレンが一人で座っていた。フローラの姿はない。何となく嫌な予感がして、素知らぬ顔で階段に向かおうとしたローズだったが。 「座れ」 グレンの、この一言で動きを止められた。 「……えっと、フローラちゃんは?」 「部…